大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)1683号 判決

以上の事実関係によれば古瀬は借地法第一〇条により被控訴人に対して本件建物の買取請求権を有するものであるところ、同人が控訴人主張の経緯で被控訴、控訴各訴訟代理人の在廷する昭和三九年五月三〇日の原審口頭弁論期日において買取請求権を行使したことは記録上明らかである。そうだとすれば同日古瀬から被控訴人に本件建物の所有権が移転し、同時にその賃貸人の地位も移転し、控訴人の本件建物に対する賃借権は被控訴人に対してその効力を生じたものというべきであるから被控訴人は控訴人に対して本件建物からの退去を訴求することは許されなくなつたものといわなければならない。

三 被控訴人はその後の昭和三九年一二月二四日の原審和解期日において本件建物買取請求権の行使を撤回しこれを放棄したと主張し、同日被控訴人と古瀬との間に被控訴人主張の条項を骨子とする和解(本件和解)が成立したことは当事者間に争がないが、その条項が被控訴人主張のごとく本件建物買取請求権の行使を撤回し、これを放棄する趣旨を含むものであるとしても、これをもつて前記のように買取請求権行使の結果被控訴人に対して賃借権を取得した控訴人に対抗することはできないと解すべきである。けだし権利の放棄は原則として権利者が自由にこれを為し得るが、その結果第三者の権利を害するに至るときはその第三者に対抗しえないものと解するのが相当であり、このことは民法第三九八条、第五三八条の法理からこれを推論することもできるし、また信義誠実の原則にてらしても当然のことだからである。

(鈴木信 石田実 麻上)

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